最終章
次の瞬間、ベンゼルの胸から一つの赤黒い光の玉が放たれ、ふわふわと宙に浮かんで。それを合図にホールの照明が灯り、メンバーは体の自由が利くようになって。
「っ、皆……!」
が、誰一人としてまともに立って動ける者はいなかった。ダークシャドウの洗脳は解かれ、メンバーも体を解放されたと同時に意識を取り戻した、しかし。
双方共に体力を使いすぎたのだ。解き放たれた赤黒い光の玉、即ちベンゼルの魂は様子を伺うように浮遊していて。
――隙を見せたら、乗っ取られてしまうかもしれない。これだけ体力を消耗しているのだ、単なる器ならぴったりだ。
「く、ぅ……ッ」
あの歌に特別な効果はない。
だけど、“悪”は私の歌声を嫌っているようだった。もし、図書館で見つけた本に書き記されていた通りだったとしたら。
分からない。でも、信じるのよ。
――そうしてきたじゃない!