最終章



――あいつを止めないと。

「リーダー!?」

スピカはダークウルフの元から離れると、リムの元へ駆け出した。マルスよりも早く辿り着いたスピカは、リムを背に庇うようにして両腕を広げ、マルスを見据える。

「いい。そのまま歌ってくれ」

リムの歌声が躊躇して途切れてしまうよりも先に、そう返す。――怖いさ、だって。


あいつらの心は。


「っ……信じろ」

違う。今までだってそうやって過ごしてきた。絶対、そして、これからだって。

「本当に……っ本当に、俺の部下なら」

きっと睨み付ける。剣を翳して向かってくるマルスを見据えたまま、声を荒げた。


「操られることの恥を知れ!」


ベンゼルは目を開いた。

――次の瞬間、マルスはスピカの腕の中にいたのだ。かたん、と小さな音を立てて、手放された剣は床に落ちる。

「リー、ダー……っリーダー……」

間もなく、マルスの瞳から一粒の涙が溢れ落ちた。スピカは優しく、髪を撫でて。

「ん」

微笑を、浮かべる。

「いいこだ」
 
 
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