最終章



一方のベンゼルは焦っていた。

もう少し、というところで曲を奏でていた、詰まる所ダークリンクが中にいる本物のリンクに妨害されてしまったのだ。

永遠に逃れられない悪夢の中に閉じ込めたはずなのに、どうして。しかし、次第に音が止んでとある声がホールに優しく響き渡れば、ベンゼルもようやく理解する。

「っさせるものか……」

必ず、野望を叶えてみせる。

ベンゼルがタクトを振り上げれば、ダークスコアはより一層赤黒い光を灯して、やがて、波紋のように解き放つ。マルスの体がびくんと震えて、ふらり、立ち上がった。

「やれ……あの小娘を……」

ベンゼルはタクトを打ち払って。

「殺れ!」

次の瞬間、マルスは駆け出していた。

構えるルーティの横をすり抜け、無防備にただ歌を口吟む、リムの元へ――
 
 
32/43ページ
スキ