最終章
――歌おう。
「っけほ、けほ……、……?」
そう。例えば、大好きな皆の為に。
「これって」
聞こえていますか。
メロディに想いを馳せて、彼女は優しく口吟む。ピチカは攻撃を食らって跪いていたが、ゆっくりと立ち上がって。
「何をしてるんだ、あの女は」
「いや……」
闘いの最中だというのに、と眉を顰めるダークウルフに対し、スピカはその歌声にそっと瞼を閉じる。――この歌は。
瞼を閉じ、その優しい歌声に耳を傾けたのはピチカも同じだった。釣られて、たどたどしくもその歌を口吟み、笑みを溢す。
「リム……」
それは、彼女が愛した子守唄だった。
リムは胸に右手を添えて、瞼を閉じ、子守唄を歌う。優しく、澄んだ歌声で。
「ったく」
スピカも小さく笑みを溢すと、ピチカに続いてその歌を口吟み始めた。幼い頃、少しの記憶に過ぎないが、覚えている。
安らかな眠りを約束した、あの歌声を――