最終章
――やっと、伝えられたってのに。
「俺だって嫌だからな」
風を切る音に、剣は振り下ろされたのだと悟る。最後に笑った彼の顔も、噴き出した鮮血に隠れ、その肉体は揺らいで。
「こんなのが最後、……なんて、よ……」
リムは思わず耳を塞ぎ、ぎゅっとキツく瞼を閉じた。それまで盛んに打ち鳴らしていた心臓の鼓動も次第に和らぎ、リムはうっすらと瞼を開く。
視界に飛び込む、横たわったネロと、その前に立ち尽くすアイク。彼の手には鮮血に塗れた剣が握らされており、確かな現実を残酷に告げる。――ねえ、お母さん。
私、本当は何も出来ないの。それでも、今、ネロが言ってくれたように、これが私の大好きな音楽だなんて、認めたくない。
無意味でもいい。例えその結果、何も変わらなかったとしても……私は。
――この想いに、傷を付けたくない!