最終章
「随分と図々しいお客様だ」
ベンゼルはかくん、と首を傾けて。
「招待状は、送ってないはずだが?」
次の瞬間、開け放されていた窓や扉が勢いよく閉まって。カーテンが閉じ、一旦、照明が落ちる。やがて、スポットライトがホール奥に移動したベンゼルを照らし出して、ベンゼルは微笑を浮かべる。
「聞こえるかい。……拍手喝采。そして、歓声。世界が歓迎するのはどちらだろう」
ルーティは眉を顰める。
「光ある未来か。或いは、絶望の闇か」
ベンゼルの手にはバイオリンではなく、タクトが握られていた。ゆっくりと振り上げれば、スポットライトは消えて。
「さあ、素敵な音を奏でようではないか」
その声を合図にホールの照明が灯った。
ホールにはマリオやフォックスといったX部隊メンバーが、虚ろな瞳で構えていて。
「最期に相応しいオーケストラを」
――タクトは、打ち払われた。