最終章
長い廊下を過ぎれば、いよいよ大ホールへと続く大きな両開きの扉に突き当たって。
内部からでは聞こえなかったが、さすがにここまで来ると扉の奥から微かに音楽が聞こえてくる。ルーティは息を呑んで。
「……ルー」
不意にスピカが声をかけて。
「うちの部下が、迷惑をかけたな」
ルーティはその台詞に何か深い意味があるのだと感じ、目を開いた。が、今はそこまで詮索せずに瞼を閉じ、小さく頷く。
「行こう。……皆が、待ってる」
大丈夫。自分の中でそう言い聞かせて、ルーティは扉を大きく押し開く――
大ホール。それまで鳴り響いていた音楽は、扉が開いたと同時にぴたりと止んで。
「……おや」
昨日の傷など何処にも見当たらない、ベンゼルはホールの中央でバイオリンを手に、顔を上げて静かに視線を向けた。