最終章
「先に行きなよ」
「えっ」
ルーティは躊躇して、
「でも」
「るっさいなぁ。あんた、いちいち構ってたら本当に大切なもん、救えないよ」
確かに、クレイジーの言う通りである。
ルーティはウルフと顔を見合わせると、小さく頷いて。ばたばたと揃ってクレイジー、そしてマスターを横切ってその先へ。
「……兄さん。やっぱり」
クレイジーはルーティ達の背中を見送った後で、マスターに視線を戻して。
「何が言いたい」
「兄さんに限って、とは思ってたけど」
――兄さん。過去に、未来に、何を思ったんだよ。どうして、悪夢なんかに。
「詮索はよくない」
マスターは小さく笑みを溢す。
「……さて。何年ぶりになるかな」
「さぁね。今度は負けないよ」
クレイジーは釣られて笑って、構える。
「兄弟喧嘩――」