最終章



「先に行きなよ」
「えっ」

ルーティは躊躇して、

「でも」
「るっさいなぁ。あんた、いちいち構ってたら本当に大切なもん、救えないよ」

確かに、クレイジーの言う通りである。

ルーティはウルフと顔を見合わせると、小さく頷いて。ばたばたと揃ってクレイジー、そしてマスターを横切ってその先へ。

「……兄さん。やっぱり」

クレイジーはルーティ達の背中を見送った後で、マスターに視線を戻して。

「何が言いたい」
「兄さんに限って、とは思ってたけど」

――兄さん。過去に、未来に、何を思ったんだよ。どうして、悪夢なんかに。

「詮索はよくない」

マスターは小さく笑みを溢す。

「……さて。何年ぶりになるかな」
「さぁね。今度は負けないよ」

クレイジーは釣られて笑って、構える。

「兄弟喧嘩――」
 
 
10/43ページ
スキ