最終章
ベンゼルが待ち構えているのは恐らく、中央司令塔の中程にある大ホール。
数十個以上ある窓を開け放てば、世界中に音楽を鳴り響かせることなど容易だ。
そこまでの道程はエレベーターを使うことで短縮出来る。ルーティ達はエレベーターを使って、大ホールのある階へ。
「……ストップ」
エレベーターを下りて大ホールまでの長い廊下を歩き、先頭を切っていたクレイジーは腕で遮るようにして、留めた。
ルーティが首を傾げて前方に視線を送ってみると、そこには一人の少年の姿。
「兄さん……」
クレイジーはぽつりと呟いて。
――そこにいたのは確かにマスターだった。瞳はもちろん青色なのだが、何処か虚ろで口元にはうっすらと怪しい笑み。
「クレイジー……いいこにしていたか?」
マスターが口を開けば、クレイジーは目を細めて。本物だ、と確信する。