最終章
奇怪な音楽が世界を賑わせ、狂わせる。
恐らく、ベンゼルは中央司令塔で音を奏でているのだろう。街には自分達を除いて、誰一人立って歩けるような人間はおらず。
「……どういう仕組みなんだ?」
ネロは計十人を守るようにして張り出された赤いバリアを見上げ、首を傾げた。
実は、さっきから全員音は聞こえているのだ。が、頭痛が襲い、悪夢に囚われるのかと思えばそうではなく。
「人体に悪影響を及ぼす、有害な部分だけを拒絶し、破壊してるんだ。だから、僕達には無害な音しか聞こえてこない」
先頭を歩くクレイジーはそう説明して。
――成る程。全ての侵入を拒む万能の盾と、有害な物質を破壊する万能の矛が矛盾を打ち消し、本当の意味で完璧を造り出す。
だから、二人であることに拘るのか。
「……器用なんだね」
「当然。だって神様だよ?」
クレイジーは誇らしげに、微笑。