第八章



――しかし。

「ッア、ぅあ……ァ……!」

スピカは激しく身を捩って、呻き声を上げている。歌が、効いていない……?

「く、ゥ」

その時、スピカの動きが止まった。

リムは引き続き、優しい歌声で子守唄を歌う。温かく、彼を包み込むように。

「ァ」


――どくん。


心臓が大きく鼓動する。かっと目を開き、スピカは天井を仰いで声を上げる。

「あアァあああッ……!」

ルーティは踏み出したが、ウルフが腕で遮った。見ろ、とウルフは顎でしゃくる。

「く……ぅ……」

次の瞬間、スピカはその場に崩れ落ちた。

彼の胸から黒い煙のようなものが漏れ始め、呻き、背を反らしたと同時に小さく赤黒い光の玉が胸の中から飛び出す。

それはユウが顔を顰め、構えるよりも先に弾けて粒子に変化し、消滅して。
 
 
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