第八章
「ッ、は……ァが……あア……!」
ルーティがリビングを飛び出し、部屋へ向かい扉を開くと、そこには赤黒い光を瞳に宿し、今にも襲いかかろうとしている恐ろしい形相のスピカがいた。
「リーダー! やめてください!」
ダークウルフはスピカの後ろに回り込み、羽交い締めにして留めている。スピカは、あろうことか大好きな妹、ピチカに殺気を向けているのだ。
「スピ、カ……」
リムはぽつりと声を洩らす。
「にぃに、やめて!」
「リム!」
名を呼んだのはユウだ。
「眠らせろ!」
「えっ」
「これ以上の催眠はスピカの身が持たない。……ぼさっとするな! 早く!」
歌うのを急かされたのは初めてだ。
リムはとにかく頷くと、スピカが視界に入らないよう瞼を閉じて。深呼吸を繰り返し、一旦自分を落ち着かせてから。
また、子守唄を歌う。