第八章



「……逃げるな、とか言うけどよ」

ネロはふと、口を開く。

「逃げてもいいんじゃねえかな」

例え一瞬でも諦めようとして、唇を噛み締めたリムを思い返す。ネロはそっと瞼を開き、口元に笑みを浮かべて。

「いつかその場所に、戻ってくるなら」


逃げるのは選択肢。戻るのは自分の意思。


「……そうかもね」

意外にも賛同したのはクレイジーだった。

それが何となくおかしくて、他の四人はくすくすと笑みを溢す。クレイジーはむっとして、ふいと顔を背けた。

「何だよ。バーカ」


その時だった。


「リーダー!」

ダークウルフの声。子守唄が途絶える。

ルーティは思わず立ち上がり、ウルフと顔を見合わせた。――何か、様子が違う。
 
 
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