第八章
――子守唄が、聞こえる。
「リム……」
リビング。ルーティはぽつりと声を洩らした。ウルフはクレイジーを避けるようにソファーの端に寄って腰掛け、カップを手に煎れたてのコーヒーを啜って。
リビングは静かだった。誰も、リムの優しい子守唄に聞き入っていたのだ。
あの、クレイジーでさえも。
「五月蝿いとか、言うと思ってた」
ルーティはクレイジーの隣に腰を下ろすと、そう呟いて。クレイジーは足を組んだまま、背凭れに凭れていて。
「……兄さん」
クレイジーはすっと視線を落とす。
「この子守唄、好きだったから」
嫌いじゃなかった、ではなく。そう言うクレイジーも、何処か顔が綻びていて。
「優しい声だな」
壁に背を預けていたリオンは、ぽつりと呟いて。ネロは小さく頷き、瞼を閉じる。