第八章
「えへへ……」
彼女だって声を上げて泣きたいはずだ。
それでも、ピチカはいつものように肩を竦め、笑って。リムは微笑すると、向かい側のベッドへ。縁に腰掛け、手招く。
「ピチカ。少し寝なさい」
素直に寄ってきたピチカにそう告げて、リムは膝を叩く。苦しい思いをたくさんしてきた彼女は、きっともうへとへとだ。
「……でも」
ピチカはスピカを振り返る。
「ピチカ」
リムは笑って。
「部隊のリーダーを勤めてる貴方のお兄さんよ? 貴方が寝て、起きたら彼も目を覚ましてるかもしれないじゃない」
本当は、そんな保証なんてないけれど。
「……うんっ」
信じてくれる人がいる。その為に、人は優しい嘘を吐く。ピチカはリムの言葉に頷いてベッドによじ登り、横たわる。
ピチカが自分の膝の上に頭を乗せると、リムは優しい手付きで髪を撫で始めて。