第八章



気付けば、リムはリビングを飛び出していた。向かう先は自分の部屋。

ダークウルフが入っていくのが見えて、遅れて辿り着き、扉の前に立ち止まる。


――確かに、何も出来ないけど。

彼らが教えてくれた。例え無力でも、想うだけで力になれるんだって。


瞼を閉じ、自分の胸に手を置いて小さく頷く。間違ってなんかない、そう心の中で言い聞かせ、瞼を開き、扉を開く。

「リム……」

気付いたピチカが、スピカの傍らで泣き腫らした顔を上げて声を洩らした。ダークウルフも、魘されるスピカの傍らで両膝を付き、ただ、彼の手を強く握っていて。

ユウは窓際に移動していて、それまで空を見つめていたが振り返った。リムは彼の視線を気にしたが、ピチカの元へ。

「……馬鹿ね」

僕が見るから大丈夫って、言ったじゃない。逃げ出そうとしてたのは自分だった。

リムはピチカの頭を撫でて。
 
 
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