第八章
「……僕も、あるよ。世界の為に、自分の命を犠牲にしようとした。皆の未来が守れるのなら、それでいいって。――でも」
ルーティは目を細める。
「自分がそうまでして守ろうと思えた、皆はどうなるんだろう。彼らの未来は本当に幸せなのかな。後悔はないのかな」
ダークウルフは目を開く。
「誰かの犠牲がどれだけ重いのか、父さんを亡くした僕だから分かる。自分を犠牲にすることは、誰かの後悔を生むんだ」
十四年。フォックス達は何度、後悔してきたのだろう。どれだけの月日が流れても、彼らは決して忘れなかった。
あの日の犠牲と、後悔を。
「そうしたら、その人の未来に靄がかかって、前に進めなくなってしまうかもしれない。或いは、奪ってしまうかもしれない」
ぽろぽろとダークウルフの目から溢れ落ちる涙は、真実だけを物語っていた。
彼は、本当に。スピカを――