第八章
ウルフは銃を下ろさず、構えている。
しかしルーティも両腕を広げて立ちはだかり、退こうとしない。それぞれの想いが対立し、睨み合っているのだ。
「……いい。退いてくれ、ルーティ」
そう口を開いたのはダークウルフだった。
「っダークウルフ!」
ルーティは振り返る。
「いいんだ。あんたがどれだけ優しいかは分かったさ。でも、そいつの言う通り」
ダークウルフはウルフを見遣って。
「今回、俺はそいつを苦しませた。次はあんたかもしれない。或いは。……或いは」
ダークウルフは視線を落とし、
「せめてそうなる前に、俺はこの命を絶ちたい。後悔なんかねえよ。人間兵器にしては出来すぎた人生だった。リーダーといい、あんたといい……本当、人間ってのは」
ルーティは顔を顰める。
「どいつもこいつも、優しい奴ばっかで」
涙が一筋、頬を伝う。それは他の誰でもなく、彼、ダークウルフのもので。
「大嫌いだった……」