第八章
「いいんじゃない? 放っとけば」
クレイジーは足を組んで。
「クレイジー!」
「そいつを殺したところで、報われるのはあんただけ、だけどねぇ」
にやり、口元に不適な笑みを浮かべる。
ウルフはようやくリオンの腕を振り払って、振り返った。撃つつもりはないのだろうが、リオンの額に銃口を突き付けて。
「てめえ、邪魔してんじゃねえよ」
リオンは応えない。
「それとも代わりに死ぬか? このマ」
「随分と自棄だな。ウルフ殿」
ウルフは顔を顰めて。
「もういっぺん言ってみろ。マゾ野郎」
「私は」
リオンはウルフを見据えて。
「こんな時まで冗談を言い合うほど、空気の読めない人間じゃない。……いい加減に目を覚ませ、ウルフ殿」
ウルフは小さく舌打ち、目を逸らす。
「ここは現実。夢の外だぞ」