第八章
「……でも、何で」
彼女が嘘を言っているとは思えない。
それにしても何故、ベンゼルが作成したダークスコアの曲をリムの母親は子守唄として歌ったのか。それが危険な曲だと知っていれば、知ろうともしないはず。
「お母さんのお婆ちゃんがね、楽譜を集めるのが趣味だったみたいなの。多分、物好きな作曲家がダークスコアの譜面を書き写したものを持っていて……それで」
興味を持ったリムの母親が――
「……お前、それでいいのかよ」
ネロはリムを見つめて。
「あんなに大好きだった音楽を嫌いになって、諦めて。それでいいのかよ」
「よくない……」
リムは頭を抱え、くしゃりと己の髪を掴んだ。ふるふると首を横に振って。
「よくないわよ! でも、言ってるじゃない。どうすればいいか分からないって」
リムは顔を顰める。
「だったら、いっそのこと――」