第八章
ネロはぎょっとした。
見れば、リムの頬を涙が伝って。声をかけようとしたが刹那、リムは口を開く。
「私、音楽なんか嫌いになっちゃいそう」
「おま、何言って」
「分からないわよ、ネロには!」
ネロは目を開いて。
「……ごめんなさい」
「いや」
「でも、私……どうすればいいか分からないの。だって……だって、あの曲は……」
涙の雫が、滴る。
「ベンゼルが奏でていたあの曲は……私のお母さんが教えてくれた、大好きな子守唄と一緒だったのよ……!」
初めは、嘘だと思った。
曲調が似ているだけだと。それでも幼い頃からよく聞かされ、自分も口吟んだ唄だ。
聞き間違えるわけがなかった。
「っじゃあ」
「皮肉よね。私の大好きな子守唄が、世界を壊そうとしてるだなんて……」
ネロは当然のことながら驚きを隠せないようだった。リムは未だ、俯いていて。