第八章
「リーダー!」
「動くな」
正気に戻った彼の後頭部に銃口を突き付けたのは、ウルフである。洗脳が解けた、とはいえ彼は敵。油断は出来ない。
「スピカ……」
ルーティはスピカの元へ歩み寄ると、髪をそっと撫でて。スピカは暫し安らかな寝息を立てていたが、急にぴくんと小さく震えて呻いたかと思えば眉間に皺を寄せて。
「ぅ……ッあ、あア……!」
魘され始めたのだ。
目の前で大切な友人が悪夢と戦っているというのに、手も足も出せないなんて。
「ルーティ」
その時、近くまでやって来たのはリムである。ぽつりと名を呼び、ルーティの正面に立ったが、思うように言葉が出ず。
「……ごめんなさいね」
私が、調べ事なんて言い出すから。
却って彼らには辛い思いをさせてしまった。リムが申し訳なさそうに呟くと、ルーティは首に横に振り、スピカを見つめ。
「今は……」
「ええ。部屋に運びましょう」
リムが頷くとユウはスピカを抱き抱え、歩き出して。こうして、大ホールには静寂が訪れ、戦いは一旦幕を下ろしたのだった。