第八章
ユウはスピカの後頭部に片手を翳すと、手のひらに紫色の光を宿して。スピカは息を呑み、爪先立ちになって背伸びをする。
「ベ、ンゼ……ル、様……ァ……」
こいつだけでも助かるのなら、俺は。
「ウルフ……」
俺は、迷ったりしない――
間もなく、ダークウルフの唇にスピカの唇が重なって。ユウの瞳が金色に煌めき、ゆっくりと手を引けばダークウルフの瞳は徐々に澄んでいき、光を取り戻す。
重なった唇を通して、赤黒い光の玉がスピカの中へ吸い込まれていった。ユウが超能力で引きずり出し、スピカに移したのだ。
「……ぁ、リー」
ダークウルフが口を開くが、
「っ、……は……」
後方によろめいたスピカをユウがすかさず支え、今度は額に手を添える。そうすることでスピカは、深い眠りに落ちた。
ダークウルフを洗脳し、彼に悪夢を魅せていたその元凶を自分が体内に受け取って。