第八章
「ウルフ!」
スピカはふらりと立ち上がるダークウルフの元へ駆け寄ると、再び倒れそうになる彼の体を支えて。明らかに、健康と言える状態じゃない。ダークウルフは咳き込み、
「ッ、か……」
少量の血を、口から溢した。
――そういえばあの時、赤黒い光の玉が飛び交っていた。あれが恐らく、彼の中で体を蝕んでいるのだ。でも、どうすれば。
「ベン、ゼル様……の、命れ……っ」
「やめろ、ウルフ!」
攻撃を仕掛けようとホルスターの拳銃に震える手を添えるダークウルフの腕を掴み、スピカは首を横に振って留める。
「命令だ! お前はっ」
「ぁ、が……ッああ……!」
頭を抱えて呻き、再び吐血。
それも先程よりか量も増えて、目の前のスピカの服を汚した。スピカははっと目を開き、ダークウルフを見つめる。
……俺はまた、何も出来ないのか。