第八章



その名を口にした途端、ウルフの心臓は大きく鼓動して。背中を大きく仰け反らせ、苦しそうに口を開閉させ――そして。

「あァ……が……ッ……!」

呻き声を洩らし、ウルフの体から黒い煙のようなものが漏れ出して。それは離れた場所で人の姿を象り、やがて実体化。

現れたのはダークウルフである。その場に横たわっていたが、震える腕で上体を起こし、息を弾ませながら顔を上げて。

「っ……はあ……」
「ウルフ!」

肝心のウルフは暫しぐったりとしていたが、大きく息を吐き出すと自ら体を起こし、ルーティに支えられながら立ち上がって。

「……ウルフ……」

スピカは立ち上がると、ダークウルフを見つめて。ダークウルフの瞳は未だ赤黒く、光は宿っていない。どうやら、まだ完全に洗脳が解けたわけではないらしい。

「リー、だ、ァ……ッ!」

立ち上がろうとしたダークウルフだったが、上手く力が入らないのか地面に倒れてしまった。しかし、もう一度体を起こして。
 
 
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