第八章



「ぐあっ! ぁ、ッか……!」

薙ぎ倒された挙げ句、ベンゼルに髪を鷲掴みにされ、苦痛に顔を歪ませるネロ。

互いに背を預け合って構えるユウとリオンも、息を弾ませてふざけた会話を交わす余裕もない。戦闘に参加したリムもぼろぼろで、今にも崩れ落ちそうだった。

「だから人間は愚かだと言うのだ」

どうして。そうまでして守りたいのか。

この世界にそれほどの価値があるとは到底思えない。まあ、光に生きた彼らには、言い知れぬ愛着というものがあるのだろう。

「ま、だ……っ」

リムがふらつきながらも駆け出したが、立ち塞がったゼルダの魔法により、弾き飛ばされてしまった。遠く離れた地面に転がって横たわり、それでも尚、腕を震わせながらその身に鞭打って起こす。

絶望でしかない、酷い光景だった。

これ以上は戦えないだろう。クレイジーは小さく息を吐き出し、目を細める。

「だから、言ったのに」

さっさと諦めていれば、自分だけでも無事だったのに。――その通り、愚かだよ。

あんた達、人間は。
 
 
18/52ページ
スキ