第八章
いつも自分の中で、ウルフは何にも劣らない強さを内に秘めた、ヒーローなんだって思い込んでいた。――だけど。
「逃がしはしねえよ。ここは悪夢だぜ?」
この手を引いてくれたのは君だった。
「離せ、ルーティ」
背中を押してくれたのは君だった。
「っ……僕は」
強くなれた。優しくなれた。
だから、今度は。
「くっ」
――僕が、助けるんだ!
バチィッ!
「何っ……」
手を突き出し、青い稲妻を放てばそれだけで腐敗した人間らを一掃することが出来た。が、そんなのは所詮、時間稼ぎ。
「走って、ウルフ!」
「てめっ」
手を引き、背中を向けて駆け出す。
視線を後ろへ送れば、先程倒したはずの腐敗した人間らが蘇生し、地面から湧き出てくるのが見えた。あれはいわゆるゾンビのようなもので、死にはしないのだろう。