第八章
穴を潜り抜けると、もうその声は聞こえなくなってしまった。代わりにルーティを迎えたのは、先の見えない暗闇。
一歩、踏み出してみると微かな息遣いが聞こえてきた。しかし暗闇の中、人影は見当たらない。ルーティは息を呑んで。
「……ッ、……ゃ……ぁあ……」
誰かがここにいる。
ルーティはきょろきょろと辺りを見回して、とにかく呼びかけようと口を開いた。
「あああぁあッ!」
耳を劈く悲鳴に、ルーティは立ち竦んだ。
皮を破り、肉を裂く音にぎゅっと瞼を瞑って耳を塞ぐ。それでも逃げてはいけないと自分に言い聞かせて、そっと瞼を開く。
暗闇に目が慣れたのか、或いは。
今度ははっきりと、視界に人の姿を捉えることが出来た。横たわり、恐怖に身を震わせて縮こまっているのは、まさか――