第八章



――どくん。

心臓が音を響かせ鼓動する。虚ろだった瞳に、じわじわと光が宿る。遠くで誰かの声がして、そっと瞼を閉じ、耳を澄ます。


……て。


誰だろう。その声は確かに、大好きな誰かの声だった。うっすらと瞼を開いて。


助けて。


はっと目を開く。

この声はウルフのものだ。しかし、目の前のウルフは……、違う。ウルフじゃない。


ウルフじゃない!


「っは」

銃口から口を離し、手を払って弾く。

宙を舞った拳銃は地面に転がり、ルーティはふらりと立ち上がった。随分と血を抜かれた気もするが、そうじゃない。

「てめえ……」

僕は、僕の存在意義を知るのが怖かった。

本当は誰にも必要とされていなくて、例え僕が死んでも悲しむ人間なんていなくて。

僕という存在が父さんの影に隠れているのだと。父さんという存在があって初めて僕があるのだと。……そうだ、ここは。

僕の不安が生み出した悪夢の世界――
 
 
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