第八章



「はは、驚いた。世も末だな」

ベンゼルは軽く笑い飛ばす。長い髪を掻き上げ、にやりと不適な笑みを浮かべて。

「面白い。もしも彼が目覚めたならば、私は一度この場から撤退してあげよう」
「上等じゃねえか!」

声を上げたのは、スピカだった。

「ルーは絶対に帰ってくる。あいつはここでやられるような奴じゃねえ!」

一緒にいたのはたった数年の癖に、何が分かるんだと咎められたとしても。

「信じている、と」
「か、っ」

先にベンゼルに言われてしまえば、勘違いするなと返しかけて、言葉を呑んだ。

そして、口を開く。

「当たり前だ!」

俺が信じてやってんだ。帰ってこなきゃ許さないんだからな! だから帰ってこい!


――帰ってきてくれ! ルー!
 
 
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