第八章
戦う三人を目に、リムはぐっと拳を握り締め、顔を俯かせていた。クレイジーは手を貸すこともなく、戦場を眺めていて。
「……どうして、嘘をついたの」
ぽつりと声を洩らすリムに、クレイジーは視線を送らない。音もなく、リムの頬を涙が伝った。滴り、小さく肩が跳ねて。
「事前に教えてりゃどうにかなった?」
クレイジーはその左目の瞳にリムの姿を映して。残酷に、言葉を吐き捨てる。
「無いものを“ある”と教えて、希望を与えたんだ。初めから“無い”と言ってたらその先に期待なんかしてなかっただろ」
「……違う」
リムは首を横に振る。
「そうじゃない! 私は……っ例え貴方達が初めから真実を言ってようが、恨んだりなんかしないわ! 絶望の向こうに見えない希望を捜して、無駄な足掻きだろうが、それでもあると信じて闘うだけ……」
リムはぐっと奥歯を噛み締めて。
「やり方が惨い、と言ってるのよ。希望と信じたそれが絶望だと知ったら、誰だって落胆するでしょう。そういうことなのよ」