第七章
「出るな」
踏み出そうとしたリオンを遮るように、ユウは腕を突き出して。ネロも、じっとベンゼルを睨み付けたまま動かない。
「随分と好き勝手してくれたじゃん」
「これはこれは」
「世辞はいいよ。気持ち悪い」
こんな時でもクレイジーはいつもと変わらぬ口調で、ベンゼルに言葉を返して。
「……大丈夫」
リムは自分に言い聞かせるように、ぽつりと呟いて。――そうだ。私達にはまだ、切り札というものが残されている。
「女よ。何か策があるのかね」
ベンゼルは首を傾げて。リムは自分の胸に手を置いて一旦深呼吸を繰り返すと、こくりと頷き、ベンゼルを見据えた。
「ホーリィスコア。知っているでしょう」
ダークスコアとは対になる、覚醒の唄。
「マスターが此処に戻ってくれば、貴方は終わり。私は楽譜に記された覚醒の唄を歌い、皆を必ず悪夢の中から――」
「ふふ……ははっ……」