「あ、ら……私、何して……」

左手を翳したシフォンが、そこにいた。

攻撃を仕掛けたのは彼女だ。しかし、自分が何故そうしてしまったのかが理解出来ず、現状に目を開き、立ち尽くして。

「そう……ベンゼル様を、っ何……誰……ふふ、汚す者は……ぁ、あ……ッ」

中に、何かいる。

シフォンがおもむろに頭を抱え、苦しみ始めると蔓はずるずると床の中に引っ込み、解放されたウルフは崩れ落ちて。

溢れ出す鮮血を留めようと傷口を押さえながら立ち上がれば、刹那、詰め寄ってきたドンキーがウルフの喉元を掴んで。

「ぁ、がッ……」

力が入らない。

いつの間にかドンキーの瞳には赤黒い光が宿り、にやりと口角を吊り上げて。

「ベンゼル様を汚す者は……汚す、者は」

ぎりぎりと首を絞め付けながら吊り上げられて、ウルフは力なくその腕を掴む。

シフォンはゆっくりと顔を上げて。

「そう。……死ねば、いいのよ」