第七章
「てめえ」
「ベンゼル。そう呼んでくれて構わないよ。君は……ああ、ウルフというのか」
名を訊ねようとすれば答えられ、それどころか此方の名前まで当てられてしまった。
ベンゼルの傍にはロイやマルスが駆け寄り、何やらこそこそ。彼らさえも敵に回ったか、とウルフはますます顔を顰めて。
「……そう。彼のパートナーかね」
彼、とは恐らくルーティのことを指すのだろう。ロイとマルスはベンゼルから離れると鞘から剣を引き抜き、構えて。
此方を見つめる双方の瞳には光というものが宿っていない。赤黒く染まった瞳は虚ろで、ただウルフだけを視界に捉えている。
「せいぜい頑張ってくれたまえ」
ベンゼルがそう言葉を放ったと同時に、ロイとマルスは駆け出した。二対一、では分が悪いが一先ずここは持久戦に持ち込もう。ウルフは銃を手にすると、迷わず。
パンッ
引き金を、引いた。