第七章
「お前、ピチカを連れて先に行け」
「ってめえ」
隣に並んだかと思えばとんでもないことを言い始めるファルコを、ウルフは咄嗟に見遣って。未だ奇怪な音楽が鳴り響き、頭痛や吐き気が襲う中、ダークシャドウを、しかも三人も相手にするのは危険すぎる。
一歩間違えれば、そこにいるダークファルコに憑依される可能性だってあるのだ。
「っは、心配性だな」
ファルコが軽く笑ってみせると、別にそんなつもりはとウルフは顔を背けて。
「……分かるだろ。お前は根本を絶て」
ここでいつまでも足止めを食らっている訳にはいかない。ウルフは眉を顰めたが小さく舌打ちを溢すと、床に寝かされたピチカを肩に担いではファルコに背を向けて。
何か言われる前に、ウルフは一度ファルコを尻目に捉えると宛もなく駆け出す。
「……へっ」
――この体が持てばいいが。
ファルコは額に微かに汗を滲ませつつ笑みを浮かべると、構え、駆け出した。