第七章
「やめとき」
「何故? 遅すぎるわ」
姉として、妹の身が心配なのだろう。
睨むシフォンだったが、ドンキーは手を離そうとしない。暫し、沈黙が訪れた。
パンッ
その沈黙を掻き切るように遠くで鳴り響いた、一つの銃声。銃にも様々な種類があって、長く戦場に身を置いていればそれがどんな銃なのか、音を聞けば嫌でも耳が覚える。ウルフは目を細めた。
「今の銃声、フォックスか?」
「いや」
訊ねるドンキーに、ウルフが答える。
「……恐らく、ダークウルフだ」
「じゃあ、まさか」
鳴り響いたのはたった一つの銃声。
本来なら銃撃戦でも始まっていいはずなのに、それにしては静かすぎる。
「にぃにがっ!」
咄嗟に立ち上がるピチカだったが、すかさずファルコが腕を掴んで止めた。その判断は正しい――彼女には危険すぎる。