第七章



「足音……?」

気付いたスピカは、フォックスの後ろからひょっこり顔を出して。足音は次第に大きくなり、どんどん此方へ近付いてくる。

「なぁんだ。寄り道でもしてたのかよ」

心配なんか別にしてないんだからな。

なんて心の中で意味もなく呟きながら、安心して息を吐き出したその時である。


こつん


「しっ」

迎えに行こうと踏み出したスピカを遮るように、フォックスは腕を伸ばす。ぴくんと揺れた狐耳が、より確実な音を拾う。

「何だよ」
「――足音が」


こつん


「一つ、多い」

遅れてスピカは寒け立った。

リビングにいる人間が此方に出てくるはずはない。それに今思えば、ローナだってはぐれたと気付いたら走ってくるはずだ。

「じゃあ」


こつん


「誰だってんだよ……」

ぴりぴりとした空気が、漂う。
 
 
27/59ページ
スキ