第七章



「……何か喋れよ」
「心細いのか?」

足音だけが響き渡り、不安に駆られたスピカはぽつりと口を開いて。

あれだけ強気に出てきた癖に、とフォックスは小さく笑みを溢して短く返す。

「ばっ、ちげぇよ! 後ろの女が何だか寂しそうだから、俺が気を利かせて」

スピカは喋りつつ、振り返る。

「やってだな――」


しかし、そこにローナの姿はなく。


「おっおい……あの女、いねぇぞ……」

遅れて、振り返るフォックス。

そこには闇の世界が広がっているだけで、ローナの姿は見当たらない。

「そんな……、まさか」

気付かなかった。思わぬ失態だ。

スピカは後退し、そのままフォックスの後ろに隠れて。鬼が出るか蛇が出るか、銃を構えながら踏み出そうとした、その時。


こつん


フォックスの狐耳が足音を拾った。
 
 
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