第七章
はっと目を開き、飛び起きる。
辺りを見回してみるも、四方八方全て黒く塗り潰されたような暗闇で。ルーティは恐る恐る、自分の右肩に触れてみる。
……傷がない。
「おはよう。目覚めたようだな」
ベンゼルの声が響き、ルーティはすかさず立ち上がっては警戒し、構えて。しかし、肝心のベンゼルの姿は何処にもなく。
「何処だ!」
「そこは常闇。私は何処にもいない」
ルーティは眉を顰めて。
「訳が分からないか。君はね、眠っているのだよ。今は……そう。夢を見ている」
「これが、夢?」
ルーティは改めて辺りを見回して。
夢というからには、もっとメルヘンチックなものを想像していたのだが。
「何もない? 何も用意してないからな」
ベンゼルの声に、ルーティは再び構える。
「そう警戒したところで、私は本当にそこにはいないのだがね。……さて」
くす、と笑みを溢すベンゼル。
「これから愉快な上映会が始まる。まあ、それが君にとっての悪夢になり得るかどうかは別だが……存分に楽しんでくれ」