第七章
――ピチカ。今、何て言ったの?
早くも激痛に遠退く意識の中、流れ出る鮮血だけが温かい。電気を使いすぎたせいで体は疲労し、ぴくりとも動かない。
……間もなく、彼の意識は途絶えた。
「意外と呆気なかったな」
ベンゼルはルーティが動かなくなるのを見計らって、ゆっくりと歩み寄っては傍らで立ち止まると、軽く蹴って転がして。
仰向けになったルーティは既に瞼を閉じており、ベンゼルはその場に跪いた。
「……気を失ったか」
意識を手放しただけで、まだ息はある。
ふと、ベンゼルは何か思い付いたのかルーティの額にそっと片手を翳して。
ウルフは歩み寄り、見下ろしながら。
「ベンゼル様。殺しますか?」
「いや――」
不適な笑みを溢し、ベンゼルは振り返る。
ベンゼルの赤黒い瞳に捉えられた途端、ウルフは糸が切れたようにその場に両膝を付き、倒れて。ベンゼルはルーティの額から、ウルフの額に掛けて手を移動させる。
「せっかくの機会だ」
最後、ルーティの右手とウルフの左手を重ね合わせると、ベンゼルは立ち上がって。
「仲良く悪夢を見ているがいい――」