第七章



「ぁ」

刹那、ルーティは目を見開いた。

ゆっくりと視線を落とすと、影によって生成された一本の棘が右肩を貫いていて。

――そんなはずはない。ウルフの影は確かに、自分が今いる位置とは逆の方向に伸びていた。それなのに、どうして。

「っ……まさ、か」

一つの可能性が脳裏を過り、ルーティは声を洩らす。恐る恐る、振り向いて。

「気付くのが遅かったな」

にやりと笑うウルフが、そこにいた。

彼の足はそちらに伸びたルーティの影を踏みつけ、そして、ルーティの右肩を貫いた棘は、自分の影から生成されたもので。

「出来ないとは言ってなかったはずだ」

ウルフが右手を薙ぎ払うと、棘は影の中に引っ込んで。解放されたルーティはがくんとその場に両膝を付き、横たわる。


「る……ぅ……」

その一部始終を見守っていたスピカは絶望に瞳を揺らし、顔を顰めては声を洩らす。

ピチカの瞳から涙が溢れ落ちた。

「いやぁああぁあ!」
 
 
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