第七章
「こんなの……っ」
再び駆け出すルーティを見つめて、ピチカは泣きそうになりながら声を上げる。
「こんなの、絶対におかしいよ! おにぃとウルフは、パートナーなんだよ!?」
スピカは口を閉ざしたままで。
「それなのにっ!」
「じゃあ、貴女が戦いますか?」
口を挟んだのはファルコである。フォックスと同じように銃は突き付けなかったが、微笑を浮かべたまま囁いて。
「ベンゼル様は、より楽しい“芸”を御所望なのです。そこに貴女のようなか弱い……そう。子供が飛び込んでどうなるのか」
思わず、口を閉ざすピチカ。
「結果は彼、ルーティの足手まといでしかならない。そうでしょう? 貴女は弱い、だからこうして捕まっている」
ピチカは静かに首を横に振って。
「でも。だからって……あんなの」
瞳を潤ませながら、俯く。
「見て、らんないよ……」
ファルコはくすっと笑みを溢して。
「だから良いのですよ。生身の悪夢は」