第七章
「逃げられたか」
ルーティが顔を上げると、大ホールの奥、そこにベンゼルの姿はあった。
それまで背を向けていた彼はゆっくりと振り向くと、ルーティを見据え、口元に笑みを浮かべては一歩、踏み出して。
「少年。……ルーティ、と言ったかな」
愛らしく、かくんと首を傾けては。
「先程はどうも」
――やはり、あの時のはダミー。
となれば時間稼ぎか。此方に残ったメンバーを仕留め、拠点を乗っ取る為の。
「皆、は」
ルーティはそこまで言って、口を噤んだ。
ベンゼルは思わず吹き出すと、大袈裟に己の腹を抱えて肩を震わせ笑っていたが。
「くくっ……く……それを、私に言わせるか? 君も、既に知っているだろう」
ルーティは顔を顰める。
「そう。……脱け殻に価値はない。なのでくれてやった。彼ら、ダークシャドウに」