第六章



握っていた手を、ゆっくりと解放する。

離れた途端――青紫色のバリアは砕け、黒い煙が入り込んできた。マスターが顎で指し示すまま、クレイジーは駆け出す。

「三、四、五……これで全員か」

耳を塞ぎ、一点に集まっているルーティ達の元へ向かうと数を数え、それから左手を伸ばして指を鳴らす。すると、一つの赤い光の玉がクレイジーの左手から飛び出し、ルーティの足下にゆっくりと落ちて。

「っ……、え?」

地面に赤い波紋が広がる。ルーティが気付いた直後だった。――黒い、大くて丸い穴が何の前触れもなく足下に現れて、ルーティを含む五人は成す術もなく。

「うええぇえええ!?」

真っ逆さま。

クレイジーは続けてその穴に飛び込もうとするも、名残惜しそうにマスターを振り返って。マスターは何も告げず、頷く。

「……無事でいて」

凄まじい大音量の中、想いを込めたその小さな声は聞こえるはずもなく。クレイジーは左手を強く握り締め、穴の中へ――
 
 
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