第六章
確かに、言われてみれば妙だ。
端からマスターとクレイジーの会話を聞いていたルーティは、思考を巡らせて。
――攻撃を与えた途端、あれか。まるで爆弾だ。それまではただ逃げ回り、時間稼ぎのように見えなくもない。
時間稼ぎ? とすれば、何の為に……
「きゃっ」
いつの間にか室内に充満していた黒い煙が、バリアを圧迫していた。所々がひび割れ始めて、リムは小さく悲鳴を上げる。
「まずいな」
バリアもそう長くは持たない。
マスターは呟いて、クレイジーを見据える。察したクレイジーは首を横に振って、
「嫌だ! 兄さん、僕もここにっ」
「事態は一刻を争う。……分かるな?」
クレイジーは一旦口を開き、噤んで。
マスターは離れかけた手を強く握ると、立ち上がりながらクレイジーの耳元で。
「愛している」
「分かってるよ、兄さん。……僕も」
クレイジーはマスターの頬に、口付けた。