第六章
「クレイジー!」
マスターはクレイジーの左手を握ったまま、傍らに跪いて安否の確認。クレイジーは額に汗を滲ませ、呼吸を弾ませている。
先程の戦いが、体に大きな負担をかけてしまっているのだ。マスターは笑い声を上げながら黒い煙を噴出するベンゼルを横目に捉え、それからクレイジーを見据えて。
「クレイジー」
「何、兄さん。僕、まだ戦え」
マスターはクレイジーの額に、己の額を重ねて。台詞が途切れ、クレイジーは顔を顰める。――これ以上は、戦えない。
「……しかし妙だな」
マスターはもう一度、ベンゼルを横目に。
「奴は交渉が目的で現れた。本当に、強く望む何かがあるのならダークスコアを使ってでも積極的に仕掛けてきたはずだ」
クレイジーも、ベンゼルを見つめて。
「そういえばあいつ、攻撃を躱してばっかだったね。やっと当たったかと思えば」
苛立ちに目を細めながら。
「あのザマだし」