第六章
ベンゼルはまたも高く飛び上がり、懐から白いタクトを取り出すと身を翻しながらタクトを振って。タクトから漏れ出した黒い光がベンゼルを纏い、やがてそれは薄型のバリアに変化、ベンゼルを包み込む。
「あっ」
ルーティは小さく声を洩らして。
ベンゼルが地面に着地した直後、見計らったように瓦礫が下から突き出てきた。
しかしベンゼルが躱すとそれは瞬時に砕け、跡形もなくなって。攻撃は止まず、逃げるベンゼルを追うようにして瓦礫が襲う。
瓦礫は彼が、躱すと消える。その繰り返しにより、戦った形跡は残されず。
――これが、万能の神の力。創造と破壊。
「……っ」
ルーティは暫し呆気に取られていた。
攻撃のタイミングが読めず、見る限りではとても躱せそうにない。あの時、もしもベンゼルがこの場所に現れなかったら。
今、彼らと戦っていたのは自分かもしれない。ルーティは今更、恐怖心を抱いて。