第六章



きっと睨み付けたルーティが肘打ちを仕掛けるも、そこにベンゼルの姿はなく。

いつの間にか少し離れた場所に着地していたベンゼルは、口を閉ざしているマスターを見つめて首を傾げ、歩み寄る。

「貴方、どうしてそこまで人間を」

悲しそうに顔を歪ませながら、リムは口を開いて。ベンゼルはぴたり、足を止めた。

「……深い理由があるとでも思ったか?」

ベンゼルはにやり。

「おめでたい。実におめでたいよ人間は」

再び、ベンゼルがその場から姿を消した。

次の瞬間にはリムの背後に現れ、頬から顎にかけて後ろから右手を添え、左手でリムの左手首を掴み、ぐいと引き寄せて。

「光の世界でのうのうと暮らす人間を見て、誰が楽しいと思うだろう。楽しそうだと思えてもそれはただの一瞬で、自分も釣られて楽しいなどと思えただろうか」

ベンゼルは続ける。

「ただの娯楽さ。闇の世界の住民は皆、それを望んでいた。楽しそうな姿を見るより、此方の方が遥かに面白い……」

最後、囁くように。

「それだけだ」
 
 
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