第六章
「やれやれ。怒らせてしまった」
ベンゼルは高く飛び上がったかと思えば突き出た瓦礫の先端に着地し、小さく笑みを溢して。次に動こうと体が揺らぐも。
「言っただろう」
ぴたり、と静止して。
「用件を言え」
マスターは冷たく言い放ち、見据える。
ベンゼルの首後ろには遅れて斜めに突き出たのであろう瓦礫が、今にも貫こうと構えている。これはマスターによるものだ。
「……言わずとも」
しかし、ベンゼルの表情に焦りはなく。
「分かるはずです」
どうして、そこまで余裕でいられるのか。
高い位置に移動したお陰で見下すような姿勢になっているベンゼルに何となく苛立ちを感じながら、マスターは口を開く。
「……目的は、我々の力か」
ベンゼルの口角がにやり、吊り上がった。