第六章



「その目だ」

ぽつりとマスターは口を開いた。ルーティは自分のことだと気付くと、怪訝そうに。

「……目?」
「そうだ。強い意志を秘めた、真っ直ぐな目をしている……あいつと同じ」

クレイジーは目を細め、続ける。

「ラディス・フォン」

ルーティははっと目を開いた。――ここで自分の父親の名が上がるとは当然、思ってもみなかったことなのだ。

ラディスは過去、マスターとクレイジーとの激闘の末、結合し、暴走した二人を止める為に己の全てを賭け、絶命した。

偽の記憶により本来の姿を知らずにいたが、今は誇りある父だ。……彼の魂は。


強い意志となり、息子に引き継がれた――


「あの日も同じ目をしていた」

覚えている。記憶を取り戻す前、彼ら二人と戦い、負けてしまった苦々しい過去を。

ルーティは密かに強く拳を握って。
 
 
19/54ページ
スキ